『告発者:スノーデンという男の選択』
2013年、ある若いアメリカ人の男が、世界中のメディアを揺るがす一大スキャンダルを巻き起こした。その名はエドワード・スノーデン。
彼はアメリカ国家安全保障局(NSA)の元契約職員で、数千ページにおよぶ極秘資料を暴露した。
第1章:優等生と愛国心
エドワード・スノーデンは、メリーランド州で育った。成績優秀でITの才能に長けていた彼は、CIAやNSAの契約社員として、機密性の高いプロジェクトに関わっていく。
「国家のために役立ちたい」――彼は心からそう思っていた。
彼はセキュリティのスペシャリストとして世界中の米軍基地や機密施設を渡り歩き、やがてNSAが行っている監視プログラムの実態に触れる。
第2章:正義と罪のはざまで
NSAはPRISMという極秘プログラムを通じて、Google、Facebook、Appleなどの大手IT企業から利用者の情報を大量に収集していた。
通話記録、メール、検索履歴、SNSのメッセージ――
「これはアメリカ国民だけでなく、全世界の人々のプライバシーを侵害している」
次第に、スノーデンは自分の仕事が「国家の安全のため」ではなく、「国家による監視支配」のために使われていると感じるようになる。
「これは間違っている」
内部通報という手段もあったが、彼は「それでは闇に葬られるだけ」と悟る。
第3章:暴露と逃亡
2013年5月、スノーデンはハワイにあるNSAの拠点から秘密裏に香港へ渡航。
そこでイギリスの新聞『ガーディアン』とアメリカの『ワシントン・ポスト』の記者と接触。
彼は約9万件のNSA関連文書を提供し、国家による大規模監視の実態を世界に暴露することになる。
「私はこれからすべてを失う。でも、真実を伝える価値はあると信じている」
――その言葉とともに、彼の素顔がメディアに映し出された瞬間、世界中が衝撃を受けた。
第4章:国家の敵? 英雄?
アメリカ政府は激怒。スノーデンに対してスパイ罪など複数の罪で訴追を開始。
彼は香港からロシアへと逃れるが、モスクワ空港で足止めされ、空港内での1か月以上の仮住まい生活を強いられる。
最終的に、ロシアが彼に一時亡命を認める形で受け入れ、現在もロシア国内で暮らしている。
第5章:その後と論争
スノーデンの暴露をきっかけに、世界中でプライバシーと監視の在り方についての議論が活発になった。
アメリカでは監視制度の見直しが進み、IT企業も政府へのデータ提供に慎重になっていく。
一方で、彼を「国家の安全を危険にさらした裏切り者」とする声も根強い。
スノーデン自身は現在も「自分は公益のために行動した」と語り続けている。
エピローグ
「私は英雄ではない。ただ、見て見ぬふりをしたくなかっただけだ」
静かに、しかし確かにスノーデンの言葉は響く。
情報社会に生きる私たちに、自由と監視のバランスを問うたスノーデン事件。
その問いは今なお、私たち一人ひとりに向けられている――。
告発の主な詳細は↓
スノーデンが暴露した主な内容(2013年以降)
① PRISM(プリズム)プログラム
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アメリカ政府(NSA)がGoogle、Facebook、Microsoft、Appleなどから直接ユーザーデータを収集していた。
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収集対象:メール、チャット、動画、写真、通話履歴、SNS活動など。
② 電話メタデータの大量収集
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Verizonなどの通信会社が**すべてのアメリカ市民の通話記録(誰が誰にいつ電話したか)**を政府に提供していた。
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内容(会話そのもの)は含まれないが、人間関係・行動パターンの把握が可能。
③ XKeyscore(エックスキー・スコア)
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NSA職員がほぼリアルタイムで、インターネット上のあらゆる通信を検索・分析できるシステム。
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メール、SNS、ネット検索、ダウンロード履歴、VPN情報などを追跡可能。
④ Boundless Informant(バウンドレス・インフォーマント)
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世界中の情報監視を可視化するNSAの内部ツール。
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国別にどれだけデータを収集しているかが地図で表示される。
⑤ 英国GCHQとの連携
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イギリスの情報機関GCHQが、アンダーシーケーブルを傍受して大量のインターネットデータを収集していた。
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NSAとの情報共有あり。
⑥ 各国首脳・国際機関へのスパイ行為
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アメリカはドイツのメルケル首相の携帯電話や国連本部・EU本部の通信も監視していた。
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同盟国であっても例外ではなかった。